共に語ろう電気のごみ

松田美夜子 (生活環境評論家)

2007年から2009年まで3年間、原子力委員を務めた松田美夜子です。

電気のごみ(原子力発電所からでる使用済み燃料)の現状と課題、国際的に進んでいる海外の事例(スウェーデン、フランス)の取り組みをお伝えできる機会をいただき、ありがとうございます。

原子力の専門家ではありませんが、行政(環境省・経産省)、市民、企業の方々と「ごみの少ない循環型社会の社会システム作り」に30年ほど取り組んできました。「対立ではなく、合意を・・・」と伝え続けて、環境と経済が共生できる社会をめざしてきました。2000年からは富士常葉大学教授として7年間、環境防災学部で廃棄物政策と社会システムを教えてきました。その体験を原子力廃棄物政策にも応用したいと原子力委員をお引き受けしました。

私の出発点は、埼玉県川口市の市制モニターです。いわば専業主婦からの出発です。自らが正しい情報を発信するため、また、日本に今欠けているものは何かを探るため、環境先進国といわれているドイツの環境政策を学ぶため毎年ドイツを訪ね定点観測を始めました。加えてスウェーデン、スイス、オランダ、フィンランド、デンマーク、イギリス、イタリアなどのEU圏を訪ねて、各国の環境政策の責任者に面談し、その報告を廃棄物専門誌「月刊廃棄物」にシリーズで15年間にわたって毎月連載しました。

原子力廃棄物を取材したのは1996年からです。スウェーデンとフランスとドイツの地層処分研究所を訪ねました。スウェーデンは環境保護の予防に力を入れ、病気が起きてから対策を採るのではなく、環境汚染も未然に防止していく国。原子力廃棄物についても、原子力発電所を稼動した時点から、その廃棄物の処理費用を電気料金に含めて徴収し、原子力廃棄物処理基金として積み立て、放射性廃棄物の処理システムの研究をスタートさせています。

オスカーシャムにあるハードロック研究所は、1995年に実物大の施設を地下500mの岩盤の中に建設しました。私がそこを初めて訪問したのはその施設がオープンして半年後です。(パワーポイントの図面を参考にしてください)。

17億年前に形成された地層に建設されている地下500mの施設は、坑道の岩盤に触れると地球の内側から地球に触れているような神秘的な感覚です。

原子力発電からでる放射性廃棄物の処理は、原子力の推進・反対に関わらず必要であるとする冷静な判断の中で、スウェーデンの国民は真剣に地層処分問題を考えてきました。

ハードロック研究所はそれ以来4度訪れています。始めは、4人乗りのトラックで坑道に入っていましたが、2008年に訪れたときには、シャトルバスで坑道の中に入っていきました。最終処分地の候補地が2ヶ所に絞られ、それらの地域の方々が見学に来るからです。2候補地区は誘致にも積極的です。年間2万人の人が見学に来て、地層処分の勉強をして帰るそうです。そして2009年に最終処分地を決定しました。

フランスは、日本と同じように原子力発電を進めてきました。人口は日本の約半分ですが、ほぼ日本と同じくらいの原子力発電量があります。原子力廃棄物政策は、国会議員がリーダーシップを取り、合意形成の場に積極的に出ています。政策立案と推進の責任者として、原子力推進・反対にかかわらず、原子力廃棄物の埋設処分の重要性を自らの国民に語ります。国民の側にも、自分たちの意見を伝える組織があります。そして双方の合意形成で物事が進展します。こうして、2010年に最終処分地の候補地の絞込みが行われ、2013年には最終埋設地が決定される予定です。

さて、日本の状況はどうでしょうか。現在原子力政策は足踏みしていますので、福島原子力発電所事故が起きる前の2010年のデータでお話します。

日本は、使用済み燃料は全てリサイクルされ、再び燃料になるものと処分されるもの(高レベル廃棄物)とに分けられます。高レベル廃棄物の発生量は、年間1000本。2021年までに4万本になるという設定で、処分場の設計が行われています。施設の大きさは地上で1平方km、地下で3.5km×1.5km。日本のどこか地質の良い地域で、地表から地下300m以深で設計されます。国が今全国に公募を呼びかけていますが、どの自治体からも応募がありません。放射線は怖いという市民意識が首長さんの肩を押さないのです。もちろん政治家も及び腰です。

私たちは、一人ひとりが放射線のことを正しく知って、今ある原子力廃棄物の、将来あるべき姿とその進むべき道筋をきちんと組み立てていかねばなりません。どうぞ、すてきなごみ仲間になってください。

【松田美夜子プロフィール】

1963年奈良女子大学卒業、 前原子力委員会委員 元富士常葉大学教授 経済産業省認定消費生活アドバイザー ???? 国の各省の審議会委員を歴任し、廃棄物政策・循環型社会づくりに参加。中央環境審議会委員として、地球温暖化問題、環境税などの審議にも参加。対立型でない合意形成の在り方を提案している。

編著「電気のごみー地層処分を学ぶたび(スウェーデン・フランス)」(リサイクル文化社。)ほか著書多数

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