身体にやさしい特別な食べ物 特定保健用食品

実践女子大学 教授 ?山﨑 壮

私は、二年前まで、厚生労働省の直轄研究機関の国立医薬品食品衛生研究所に二十九年間務めておりました。十数年前から「特定保健用食品」いわゆる「トクホ」の審査に関わってきました。この分野で審査の経験を積むうちにいつの間にかかなりの知識を得ることができました。そこで、今日は、機能性食品を巡る話題として、私自身が十年以上携わってきた「特定保健用食品」を審査する側から見ると「健康食品」は、どういったものかという話をさせていただこうと思います。

特定保健用食品ってどんなもの?

まず、特定保健用食品の位置づけを簡単に説明しましょう。日本の法律(薬事法及び食品衛生法)では、口に入る物は「食品」か「」のどちらかであり「健康食品」は、「食品」として扱われています。食品は、一般食品のほか特別用途食品保健機能食品の三グループに分けられます。特別用途食品は、主として、病人、乳幼児、妊婦など特別な状況にある人に提供されるもので、特別の状況に対応できるように栄養改善法に従って調製された食品で、厚生労働省が審査をして承認する食品です。保健機能食品は、さらに、特定保健用食品と栄養機能食品の二グループに分類され、特定保健用食品が、いわゆるトクホと通称される機能性食品です。栄養機能食品は、ビタミン類とミネラル類です。今日は、特定保健用食品に重点を置いてお話しようと思います。

まず、保健機能食品は、他の食品と違って国が有効性と安全性を確認し「健康に良い」といった機能表示ができる特別な食品です。それ以外の「健康食品」とか「サプリメント」として出回っている食品は、全て一般食品に分類され機能表示をすることはできません。しかし、これがしっかりと理解されていないので、最近は、ブームに乗って紛らわしい表示をして期待を持たせるような健康食品がたくさん出回り問題になっています。

特定保健用食品の効果は優しくゆっくり

私達がなぜ食事をするかを食品の機能という観点で整理してみると三つに分けられます。第一の機能は、栄養素あるいはエネルギーの補給をするための食品としての栄養機能です。第二の機能は、味や香り、美味しさといった食事をすることで心身が寛ぐ嗜好機能です。これがあるので、ついつい食べ過ぎたりするのですが、これも食品としてはとても重要な働きです。そして、第三の機能は、この十年くらいの間に注目されてきた食品成分の生体調節機能です。中国では、古くから医食同源という考え方がありましたが、その考え方は、日本にも伝わり、食品に生体調節機能があるということが知られていました。食事は、世界中で多かれ少なかれ体調を整える手段として使われてきたことは間違いありません。この三次機能に注目して開発されている食品がいわゆる機能性食品ですから生体調節機能が有効に発現するように設計された食品です。しかし、食品の場合は、効果があっても非常に緩慢にしか現れませんので、薬のように、その食品を食べたら、すぐに病気が治るという即効性は、ほとんど期待できません。食べ続けると少しずつ健康になってゆく、あるいは、病気に強い身体に体質改善されてゆくという効果が特徴です。これは、数日?一年程度の運動では、健康増進効果がほとんど感じられないけれど、二十?三十年間運動を続けた人は、その間全く運動してこなかった人より健康でいられるということです。このように、何年という長い単位で見ると効果が現れるのが機能性食品の効果の特徴です。

一方、医薬品には、明確な薬理作用が求められます。もちろん、安全性を確保する必要はあるのですが、有効性と安全性を天秤にかけて、有効性の方が勝っていれば、多少の副作用は容認できると考えられています。その典型例が抗がん剤です。抗がん剤は、強い副作用を持っている場合が多いですが、がんを抑制する効果の方が大きければ治療薬として使われます。この場合、薬の品質や有効性は、法律でしっかりと管理され、かつ、使用時には、医師や薬剤師が医薬品の用法と用量を管理して、最大の効果と最小の副作用が実現するようにコントロールします。

食品は、保健機能食品も含めて、何を、どのようにして食べるかは消費者の自由です。しかし、保健機能食品の生体調節機能は、穏やかといってもても、医薬品と同じ薬理作用によっています。その意味では、医薬品と同じですですから、一般食品と違って安全性がしっかり確保されていることが求められます。このように、保健機能食品は、医薬品と食品の中間的な位置付けにあって「健康に良い」というような機能表示が認められた食品なので摂取目安量も表示されます。

保健機能用食品は医薬品ではありません

このように健康食品のなかで、国が機能表示等を許可しているのは、保健機能食品だけです。この保健機能食品には、特定保健用食品と栄養機能食品の二つがあることをお話ししましたが、どちらもあくまで食品であって医薬品ではなく、病気の治療とか治癒を目的に利用するものではありませんが、医薬品のような強い効果があるのではないかと期待する人が多くおられます。そういう人は、医薬品を飲まずにこの保健機能食品を摂っていれば病気にならない、あるいは病気が良くなると信じておられるようですが、決してそうした即効効果はありません。ですから、保健機能食品には、、「糖尿病が治ります」とか「糖尿病を予防します」という治療効果を表示はできません。また、「筋肉を増強します」とか「筋肉モリモリにします」という身体的効果も謳うこともできません。弱いといっても薬理効果があるのですから、保健機能食品に関しても、それを表示したいところですが、薬事法でがんじがらめに制限されているので、薬事法をすり抜けるような表現を使わざるを得ません。そのため、非常に判りにくく、一般消費者にとって、「一体なにに効くのか判らない」ということになってしまいます。我が国では、欧米諸国に比べ、この保健機能食品の効果を謳うために医薬品的な表現を認めるということが大幅に遅れています。現在、我が国でも、表示のあり方の見直しがまじめに考えられています。

それでは、保健機能食品の摂取で見られる効果について少し話してみましょう。まず、保健機能食品のひとつのグループの栄養機能食品です。これは、ビタミンとかミネラルのことで、栄養学的に効果発現のしくみがかなり判っています。従って、効果が期待できる摂取目安量あるいは最低必要量も判っていますので、食品にその量の成分が入っていれば、あらかじめ国が認めた機能表示をして保健機能食品として販売することができます。

もう一つのグループである特定保健用食品は、生活習慣病を始め様々な病気の発症を抑制することを目指して開発されている食品です。ですから、有効性、安全性、品質、表示内容に関して国が個別の食品ごとに審査をし、一定の効果が認められるものだけが承認されています。従って、確認された効果について、承認された内容だけを商品に表示することが許されます。例えば、脂っこいものをたくさん食べると、血中中性脂肪が上昇して、肥満や生活習慣病のリスクがあがるのですが、EPAとかDHAなどの多価不飽和脂肪酸を食事とともに摂取すると肝臓での脂肪酸合成を低下させ血中の中性脂肪を下げ、身体に脂肪が付きにくくする効果があることが知られています。そこで、魚肉ソーセージや清涼飲料にEPAとDHAを加えた商品が販売されています。しかし、この商品には、「脂質代謝異常が治る」とか「脂質代謝異常を予防できる」とか、「血中中性脂肪値が低下する」とかいうことは記載できません。そのかわり、「科学的に血中中性脂肪を低下させる作用が認められているDHAとEPAを含んでいます」や「血中中性脂肪が気になる方に適した食品です」などと表示されています。DHAとEPAが血中中性脂肪を低下させると表示できますが、この血中中性脂肪の増加が関連する疾病を治すことができるとは表示できません。表現の違いを判ってもらえましたか?

勿論、この食品を食べると血中中性脂肪を下げる効果があることは、臨床試験結果の審査で確認されています。しかし、医薬品のように、摂取した人のほとんどの人に病気を改善する効果があるといった厳しい基準で審査されるのではなく、その食品を摂取しない場合に比べて10?20%程度低下すれば効果があると判定されます。そうなると、あまり効果のない人もいることになりますが、効果がある人が一定割合いると全体としては有効という評価になります。特定保健用食品は、医薬品ではなくあくまで食品であることを忘れないでおいてください。

魚は血液サラサラ成分の宝庫

EPAとDHAは、魚介類、特に青魚に豊富に含まれている脂肪酸です。そのため、日本人の食生活では、毎日約1グラムを摂取しています。漁民は、魚をたくさん食べていますから平均摂取量は、2グラムを超えます。日本人の場合、昔からの日本の食事をきちんとしていれば、必要なEPAやDHAは、充分に摂取できます。しかし、農村の住民や女子大生などの摂取量は、1グラムを切っているようで、こうした方々では、不足しますす。特定保健用食品の魚肉ソーセージや清涼飲料には、EPAとDHAをあわせておよそ1グラムが添加されていますので、魚をあまり摂っていない人が補助的に摂取すれば効果があると思います。

EPAとDHAには、血中中性脂肪を下げる働きの他に、もう一つ重要な働きがあります。それは、血液を凝固しにくくする、つまり血栓ができにくくする働きです。そのため、脳溢血、心筋梗塞、脳梗塞、血栓症、動脈硬化症などの予防にも効果があります。さらに、炎症症状も軽減されるというのが判っています。このようにEPAとDHAの効果は、科学的に証明されています。

EPAやDHAを含んだ食品は、多くは特定保健用食品として販売されていますが、国の審査を受けていない健康食品としても販売されています。ある食品会社が販売している健康食品にEPAやDHAのことを「青魚サラサラ成分」と表示されていますが、血液を凝固しにくくするという機能があることを表現していると思われます。「血液を凝固しにくくする」と表現すると薬事法違反になるので「血液サラサラ」と表示しているのですが、爽やかなイメージを感じますね。しかし、実際には「血液サラサラ」という表現は、医学的に意味がありません。皆さんは、評判のTV番組で、血液中にある赤血球が櫛状の細いスリットの間を通る映像を見せて、通りやすいと血液サラサラ、通りにくいと血液のドロドロと説明されているのを見たことがあるでしょう。しかし、これは、赤血球が変形をしてスリットをすり抜けているのであって、医学的に血液のサラサラ度や凝固しやすさとは関係ありません。マスコミや健康本で広く取りあげられ、一般消費者になじみのある表現ですが、科学的に誤った情報なのです。同じように、バナナダイエット、ココアダイエット、インゲン豆ダイエット、タオルダイエットなどの健康改善法が人気のTV番組で取り上げられブームになりましたが、内容を充分に確認する必要があると思います。

特定保健用食品の摂取はバランス良く

多価不飽和脂肪酸は、二重結合を二個以上含む脂肪酸で、二重結合の位置の違いによってn-3系とn-6系の二種類があります。人間は、どちらもを生体内で作ることができませんので食品から摂取しなければならない必須脂肪酸です。n-3系の多価不飽和脂肪酸には、EPA、DHA、アルファ-リノレン酸などがあり、EPAとDHAは、魚油、。アルファ-リノレン酸は、亜麻仁油、しそ油、ごま油に多く含まれています。

n-6系の多価不飽和脂肪酸には、リノール酸、ガンマ-リノレン酸、アラキドン酸などがあります。リノール酸は、紅花油、ひまわり油、大豆油、ゴマ油、トウモロコシ油など、ガンマ-リノレン酸は、月見草油に含まれています。月見草油は、健康食品にもあります。アラキドン酸は動物組織にたくさん含まれています。

ここで皆さん方に注意して欲しいのは、多価不飽和脂肪酸をn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の二つの系列にわざわざ分けていることです。これらの物質は、生体内でさらに、トロンボキサン、プロスタグランジンおよびロイコトリエンなどのエイコサノイドという生理活性成分に代謝されていくのですが、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸からそれぞれ作られるエイコサノイドの活性の強さが違うのです。トロンボキサンは、血小板を凝集させますが、プロスタグランジンは、血小板の凝集を

抑制します。つまりトロンボキサンは、出血時に血を止める働きをし、プロスタグランジンは、血液中で血液成分の凝集を抑制する働きをします。また、トロンボキサンは血管を収縮させ、プロスタグランジンは血管を拡張させます。このように、トロンボキサンとプロスタグランジンの作用は拮抗していますので、トロンボキサンとプロスタグランジンがバランス良く存在していないと血液はうまく流れないし、出血が止まらないという状態になります。

もう一つのエイコサノイドであるロイコトリエンは、炎症反応に関係します。これらすべてのエイコサノイド活性の強弱が、n-3系多価不飽和脂肪酸を原料とするかn-6系多価不飽和脂肪酸を原料とするかで大きく違うのです。ですから、両者をバランス良く摂取することがとても重要なのです。EPAとかDHAを含む食品は、n-3系脂肪酸なのですが、これを多く摂取するとプロスタグランジン作用が強くなって血液が固まらなくなって出血しやすくなります。ですから、魚を大量にとっているエスキモー人はn-3系脂肪酸の摂取量が多いので、副作用として、出血すると血液が固まリにくいと言われています。

最近、植物油でリノール酸が多く含まれていることを謳い文句にしている植物油がいくつかあります。これは、n-6系の多価不飽和脂肪酸です。リノール酸は、LDLコレステロールを下げるので高コレステロール血症の人に良い食品ですが、あまりたくさん摂ると、いわゆる善玉コレステロールのHDLコレステロールも下げてしまいます。また、リノール酸は、体内でアラキドン酸に代謝されるのですが、このアラキドン酸が多くなるとアレルギー反応を増悪させてしまうという副作用があります。また、多価不飽和脂肪酸は酸化しやすいので、過酸化脂質が増えてしまい、様々な不都合を生じます。ですから、特定保健用食品や健康食品でもたくさん摂れば良いというものではありません。

こうした例から想像できるかと思いますが、特定保健用食品は、それぞれに効果があるのですが、その効果を期待するがゆえにたくさん摂って過剰摂取になると食生活のバランスが崩れてしまい不都合がでます。ですから、特定保健用食品は、食生活のバランスが乱れている人が、不足している成分を簡便に補うという目的で使う場合には便利なのですが、たくさん摂ったから、余分に健康になるというものではないことを理解することが重要です。

お茶成分の痩身効果

京都は、お茶がとても有名ですが、お茶に含まれるカテキンが健康維持に有効だということが段々明らかになって、ペットボトルのお茶が普及してたくさん飲まれています。茶カテキンは、脂肪を酸化して二酸化炭素と水に変える反応を促進します。そのため、カテキンを大量に入れたお茶が肥満対策の特定保健用食品として販売されています。

カテキンは、お茶の渋みの原因物質ですから、そのままの形で飲料中の含有量を多くすると渋くて飲めません。そこで、カテキンをシクロデキストリンに封じ込め、カテキンが直接舌に触れにくいように工夫されました。シクロデキストリンは、お腹に入ると消化酵素で分解されますので、カテキンが飛び出し消化管から吸収されて体の中で働くようになります。この効果を人で実証するために、このお茶を十二週間毎日飲んだ人とそうでない人の内蔵脂肪量、皮下脂肪量、ウエスト周囲長などを測定すると、このお茶を飲むと、男女ともにこれらの値が5?10%程度減少しました。また、このお茶を飲み続けた人は、食後の酸素消費量が増え、脂肪燃焼率が増加します。しかし、効果の男女差はありませんが、個人差が大きくて、効く人もいれば効かない人もいるという状況です。健康で正常体重の人が痩せようと思ってもなかなか痩せることはできないのですが、太っている人ほど効果が大きいようです。

もう一つ、血中中性脂肪に関係する特定保健用食品の飲料として黒烏龍茶があります。この商品は、ウーロン茶重合ポリフェノールが消化管からの脂肪吸収を低下させるので、脂肪の多い食事とともにこの飲料を飲むと食後の血中中性脂肪の上昇が穏やかになるというものです。この商品には、「脂肪の多い食事を採りがちな方、血中中性脂肪が高めの方の食生活の改善に役立ちます」という表示がされています。ひと臨床試験の結果では、この飲料を食事とともに摂取すると、飲まない人に比べて食事後の血中中性脂肪濃度が20%程度低くなりました。さらに、食事後に糞便に排出される脂肪量がおよそ2倍になるようです。ウーロン茶ポリフェノールが食品に含まれる中性脂肪と結合し、消化酵素が働きにくくなって、そのまま便に出てしまうのです。こういう仕組みで消化管からの中性脂肪の吸収量が減るのです。

特定保健用食品の作用は医薬品の百分の一

ついで、特定保健用食品と医薬品の効果の強さの違いを話したいと思います。特定保健用食品は、食品なので、医薬品のようにキレのある効果を期待できません。しかし、穏やかですが確かに効果があります。それで、医薬品に比べてどれくらいの効果があるかを示す例をご紹介したいと思います。

降圧ペプチドは、様々な食品由来のタンパク質を分解して作られ特定保健用食品の機能成分として許可されているもので、牛乳、鰹節、ごま、イワシからキノコや海藻まで、実に様々な食品のタンパク質が原料になっています。

これらの降圧ペプチドは、タンパク質の分解物なので、いろいろなペプチドの混合物ですが、多くの場合、アミノ酸配列が決定されていません。このペプチドは、血圧上昇に関与するアンギオテンシン変換酵素(ACE)を阻害して血圧を降下させます。この仕組みは、医薬品のACE阻害薬と同じですが、医薬品として使われているACE阻害薬と比べると作用がとても弱いです。作用が弱いといっても、作用メカニズムは同じなので、過剰に摂取すればACE阻害薬と同じ副作用が出る可能性があります。医薬品のACE阻害薬には、空咳が出る副作用があることが臨床的に判っっていますので、この降圧ペプチドを使った特定保健用食品にも「まれに空咳が出ることがあります」という注意書きをすることになっています。ただし、現在まで、特定保健食品を食べて空咳があったという報告はありません。

ある企業がラクトトリペプチドを含み、血圧低下効果をもつ特定保健用食品を販売しています。これは、牛乳を乳酸菌発酵させて分子量の小さいペプチドを作って製品化しています。この飲料を8週間続けて飲んでいますと、収縮期血圧(最大血圧)および拡張期血圧(最低血圧)は、いずれも10mmHg程度降下しています。飲むのを止めるとまたもとに戻ってゆきますから、この飲料が血圧降下をもたらしているのは間違いありません。10mmHg程度の降圧は、余り大きなものではありませんが、「10mmHgも下がったので嬉しい」という人はたくさんおられます。ただ、特定保健用食品に含まれている降圧ペプチドの活性は、医薬品としてのACE阻害剤(リシノプリルとかエナラプリルなど)の1/100?1/1,000程度と見積もられています。したがって、医薬品の代わりに、これらの特保を食べることにより高血圧を治療できると期待してはいけません。

特定保健用食品は科学的根拠に基づいて許可される

特定保健用食品の機能は、科学的な根拠、つまり試験データがないと認められません。そして、勿論、有効性を担う成分(関与成分)が判明している必要があります。一般食品では、同じ野菜でも作る農家によって味が違うことがありますが、味が違うということは含まれている成分が違うということです。一般食品ではよくあることですが、特定保健用食品、いつでも品質がきちんと保証されていることが要求されます。そのために、関与成分を定量する方法とこの食品の品質をきちんと管理する方法の両方が確立している必要があります。それから、どういった仕組みで効果が発現するかも判っている必要があります。医薬品の場合は、これらのことを評価するために、一つの薬ごとに少なくとも百億円は必要であるといわれますが、食品では、とてもそこまでの投資はできません。それでも、特定保健用食品では、細胞実験や動物実験レベルで有効性発現の仕組みがある程度判っていて、小規模でもヒト臨床試験で有効性と安全性が確認されていることが求められています。いわゆる健康食品では、こうしたことも要求されませんから、ここが、特定保健用食品が健康食品と根本的に違うところなのです。

特定保健用食品は食べ合わせにご注意 

もう一つ、特定保健用食品の審査の際に注意されることをお話しします。それは、特定保健用食品の有効成分が医薬品と相互作用をするかどうかです。同じ作用メカニズムを持つ場合や関与成分が医薬品の吸収に影響する場合などには、医薬品の効果がプラスにもマイナスにも影響される可能性があります。医薬品は、身体に入ると薬物代謝酵素P450などの酵素の働きで代謝・解毒されます。したがって、関与成分が薬物代謝酵素を誘導したり酵素活性を阻害すると問題が起きます。こうした現象は、一般食品の場合にも起きることが知られていますが、有名なのは、グレープフルーツです。グレープフルーツの成分であるフラノクマリンが、薬物代謝酵素活性を阻害してしまうので、グレープフルーツを食べた後、三~四日間ぐらいは、薬の血中濃度が高いままの場合があります。特に問題になるのは、飲み合わせで血糖値とか血圧が急激に変動することです。極端な低血糖や急速な血圧低下は、ショック症状を引き起こしますので、血糖値や血圧に影響する特定保健用食品の場合には、同じ効果を持つ医薬品と相互作用があるかないかを慎重に評価されます。

こうした観点でもう一つ注意する必要がある食品成分に大豆イソフラボンがあります。大豆イソフラボンは、大豆の成分で、女性ホルモンのエストロゲンと同じ作用メカニズムを持ちます。エストロゲンには、骨粗鬆症を予防するとともに乳がんや前立腺がんの発症を予防する効果があるのですが、摂取量が多すぎるとかえって乳がんの発症や再発リスクを高めてしまいます。そのため、大豆イソフラボンを主成分とする特定保健用食品の摂取は、適量だと有効ですが過剰になると有害になります。さらに、大豆イソフラボンを濃縮した商品は、あくまで食品ですので、誰でも自由に好きな量だけ摂取でき、過剰摂取する人がいる可能性があります。そこで、大豆イソフラボンを濃縮した食品については、摂取の上限量が決められました。ただし、大豆はタンパク質、脂質、ミネラルなどの栄養源として栄養学的に極めて優秀な食品であり、これまで日常的に食べられてきた豆腐などの大豆加工品や大豆を使った食品は、摂取制限は設けられていません。

アルファ-グルコシダーゼ阻害効果を持つ医薬品も要注意です。ヒトがでんぷんを摂取すると消化管の中で消化されてブドウ糖(グルコース)になります。その時、働く消化酵素がアルファ-グルコシダーゼです。ですから、アルファ-グルコシダーゼの働きを抑えてしまうとでんぷんが分解されなくなりますので、そのまま便とともに体外へ排泄され、結果として血中ブドウ糖量が減少します。ですから、アルファ-グルコシダーゼ阻害薬は、作用が緩やかで低血糖症などの副作用を起こしにくいので、糖尿病の治療薬としてよく使われます。この薬と難消化デキストリン、グァバポリフェノール、小麦アルブミン、豆鼓エキスなどの糖尿病予防効果がある特定保健用食品の食べ合わせは、注意が必要です。これらの成分は、消化管からのブドウ糖の吸収を抑制しますので、アルファ-グルコシダーゼ阻害薬と併用するとブドウ糖の吸収が抑制され過ぎて低血糖になるおそれがあります。また、アルファ-グルコシダーゼ阻害活性を持つ食品成分、たとえばコタラヒムブツ由来のチオグリシトールなどは、医薬品と同じ作用メカニズムなので、アルファ-グルコシダーゼ阻害薬との併用には注意をすることが必要です。

特定保健用食品は科学的医食同源を目指している

特定保健用食品は、生活習慣病の発症を予防するというのが目的で開発された特別な食品です。薬理効果は、医薬品と同じように薬理効果が見られるものも少なくありません。しかし、あくまで食品ですから、医薬品と同じように短期間で疾病を治療するような劇的な効果は、ありません。効果は、すべてのひとに現れると限りませんが、長期摂取すれば、かなり多くの人で健康の保持や増進効果がみられことは、明らかです。人々が、様々な食品をバランス良く食べる習慣をつけるために、食卓で特定保健用食品が果たす役割は大きいと思います。貴方にあった方法で医食同源の願いを実現してくださることを願っています。

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